Atelier la Primavera

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                                                                About Porcelain



ポーセリンアートとその制作過程
歴史や魅力について
できるだけ判りやすく
私の言葉も交え
ご紹介しております。


ご興味を持つきっかけとなったり
これから始められる方の
ご参考になれば嬉しいです。

ポーセリンアートとの出会いが
日々の生活をより潤わせ
楽しみや励みになりますように
またその喜びや感動を
多くの方と分かち合えますように
願っております。



アトリエ・ラ・プリマヴェーラ
河合りえ子
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Porcelain Art 〈陶磁器上絵付け〉 
それは陶磁器に絵を描き装飾するアートです。

「 陶磁器の絵付け」 の事ですが、
「 ポーセリンペインティング 」Porcelain Painting
「  チャイナペインティング 」China Painting とも呼ばれています。


*** ポーセリン? ポーセリンアートって何? ***

ポーセリン という言葉は、イタリア語の「ポルチェラーナ」が語源だそうです。マルコ・ポーロがヨーロッパから東洋に旅に出て初めて磁器を見た時、その白くなめらかな磁肌が、まるで子安貝(ポルチェラ)のようだったと伝えたとか。いよいよ16世紀に中国や日本の磁器がヨーロッパに入るようになり、マルコの言葉のままに、子安貝が磁器の呼称となったのですね。

また、「チャイナペインティング」のチャイナは、ここでは中国の事ではなく、中国から初めて磁器がヨーロッパにもたらされたという意味で、チャイナが磁器の同意語となりました。当時、磁器は遙か東洋の神秘のベールに包まれた、美しく貴重な存在だったようです。
さて、ポーセリンアートは陶磁器に絵を描き装飾することと先に申し上げましたが、水分を吸収しないつるつるの磁器の上に、単に絵の具で描いただけでは、擦れば取れてしまいます。ではどうするかというと、陶磁器に低鉛耐酸性の食器専用の絵具で描いた後、800℃前後の温度で焼成します。そうすると色が陶磁器表面の釉の上(over-glaze)に定着します。焼成する事で、洗っても擦っても取れない「用の美」が生まれるのです。ポーセリンアートは、この描いては焼成するという作業を繰り返し、作品に仕上げてゆきます。

*** 最初は何から始めるの? ***

作業はまず、絵付けをする陶磁器を選びます。
描きたい図柄やデザインを決め、下絵をトレーシングペーパーに写し、陶磁器にあてがい、カーボン(専用のものもあります)で転写します。トレースした線は、釜の熱で消滅し痕には残りません。その下書きを元に絵付け作業に入るので、カップなどの湾曲した形状の上でも安心です。(もちろん下絵をせず、直接フリーハンドで描いてもかまいません)

そして最初から完成に近い色を一度で描くのではなく、薄く色を重ねては焼成するという作業を繰り返す事で、色彩に深みや奥行きを表現してゆきます。もちろん一回の焼成で仕上げる表現もあります。急いで仕上げたい場合や小さい作品などは、焼成回数を減らすための工夫や技法を応用する事が出来ます。
このように、色を重ねては焼成するという作業の繰り返しなので、絵心がないとか、絵に自信がないからなんて尻込みする事はありません。陶磁器に描いてみたい!という気持ちがあれば、どなたでも取り組める作業なのです。


平面な画用紙と違い、陶磁器には多種多様な形状があり、その艶やかな陶磁器の表面すべてがキャンパスと見立てる事ができますので、形状を用いた自由な表現の幅が広がります。
単に鑑賞するだけではなく、毎日使う食器からインテリアとしての装飾品まで、絵付けをする事でオリジナルな装いを味わえる、たいへん実用的で奥深いアートだと思います。


*** どんな人がどんな手法で描いているの? ***

 「絵付け」というと、プロの絵付け師や陶芸家の専門的分野のもの、というイメージをお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんが、今は決してそんなことはありません。ヨーロッパ、米国、オーストラリア、ブラジルなどでは、ポピュラーな趣味として定着しています。世界のあちこちでコンクールや技術交流会を目的とした大会が開かれ、生涯の趣味として楽しまれている方がたくさんいます。

日本では、当初は海外赴任などで海外に滞在されたミセスの方々が現地で習い、帰国して広められたそうで、限られた方々の趣味であったようですが、近年、ポーセリン専門の大手スクールが出来、講師陣も増え、15年くらい前からどなたでも親しまれるようになりました。
また、材料や、選ぶのに迷う程たくさんの形の白磁を取り扱う専門ショップもあり、ネットで購入する事も出来ます。
焼成は専用の焼成窯で行いますが、焼成を請け負うショップやスクール、個人のお教室を探す事も容易です。
初めて挑戦される方には、是非、描きたいものを自由に・・・、と申し上げたいところですが、実はつるつるの磁器の上に絵を描く作業は、慣れるまでちょっとしたコツがいります。なので最初は、基本となる丸筆と平筆のストロークを学びに行かれてから始められると、よりスムーズに親しんでいただけると思います。

 さて、中国で磁器が発明され、色絵や染付がスタートしてから、400年以上の長い歴史の中で、いろいろな様式や伝統の図柄が数多く生まれ受け継がれてきました。現在、私達が趣味として取り組む時、大きく分けて二つの手法(スタイル)を基に、表現の幅が研かれています。

ヨーロピアンスタイル:
マイセン等、ヨーロッパ各窯で、中国シノワズリや日本の柿右衛門様式の色絵・有田などの染付の模倣を経た後、ヨーロッパ的な独自のスタイルに発展させた様式です。主に丸筆を使い、伝統的な図柄を組み合わせたり、豪華な金彩を施す特徴があります。
アメリカンスタイル:
20世紀初頭から、米国・オーストラリア・ブラジル等のペインターが始めた、光や影、奥行きを感じさせるような絵画的で自由な発想の様式の事です。主に平筆を使い、グラデーションを生かす手法で描いてゆきます。ナチュラリスティックスタイルとも呼ばれます。



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(ヨーロピアンスタイル)

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(アメリカンスタイル)

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(動物)

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(ポートレート)

どちらかのスタイルにこだわりを持つのも、両方の手法を合わせてオリジナルな表現を見いだすのも、
描く人の自由で特に決まりはありません。
いずれも時代とともに、新しい表現や技法が生まれ、日々変化を続けています。
伝統を尊び受け継がれながらも、新しい作風や流行も加味され、ひとつひとつの作品が唯一無二なのです。
他の文化・芸術がそうであるように、ポーセリンアートの魅力も、そんなところにあるように思います。
家族で囲む食卓に自ら絵付けをしたお皿に料理を盛りつける幸せ、好きなモチーフを描いたマイカップでお茶をいただく喜び、
食卓だけにとどまらず、飾り皿にペットを描いて飾ったり、陶器の小物入れや花瓶、タイル等に装飾してキッチンや浴室を飾ったりと、自由な表現に限りはありません。
そのような豊かな空間を提供してくれるのがポーセリンアートです。
焼き付けられた絵柄は、400年あまり前の古伊万里の器が現存するように、壊さない限り半永久的に存在してくれます。
なんだかだんだん専門的なお話になってきましたが・・・。
ポーセリンアートを楽しむのにあまり難しい知識は必要ありませんね。
まずは、体験してみて下さるといいですね。
以下は、どうぞご参考までに。

*** 使われる絵の具はどんなもの? ***
 低鉛耐酸性の食器専用の絵の具で、表現の趣により、洋絵の具と和絵の具を使い分けます。
洋絵の具: フラックス(ガラス質、溶剤の一種)に顔料を入れ色を作ったものです。粉末状になっており、メディウムオイル(溶剤)で練り、ペースト状にしてから使用します。不透明で発色がよいので、薄く塗って使う事ができます。 
焼成する窯の中で、メディウムオイル(溶剤)が熱でなくなり、色だけが磁器の表面の釉に定着し、彩色されてゆきます。
主に洋食器に多く用いられています。

和絵の具: 主成分は酸化鉛と珪石で、それぞれの色に発色する金属を混ぜて作られます。
透明なので、濃い色を出すには厚く盛り上げる必要があり、別名「盛り絵具」とも呼ばれます。粉末状で、主に水等で溶き、磁器の上に筆で置く様にして盛り上げて着彩します。
洋絵の具にはない透けと深みがあります。四季を彩る和食器など、日本の多くの窯元(有田・九谷・京都等)で多用されています。

 他には、装飾等に使う特殊絵の具(金彩、銀彩、雲母彩、ラスター彩等)があります。  

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イタリアのフィレンツェにあるリチャードジノリの窯元に併設されたミュージアム
(Museo Richard-Ginori della Manifattura di Doccia s.r.l)を訪れた際、撮影した画像。
グラデーションが美しい、開窯当時に使われていた絵の具瓶


*** 「磁器」はどこで生まれ、どんな歴史があるの? ***
 絵付けを施す「磁器」は、16世紀、中国の景徳鎮で生まれました。
カオリナイト(カオリン)という約1300℃の高温に耐える磁土が発見され、白く透光性があり、硬くて艶やかな「磁器」が焼き上がったのです。
「磁器」はその後、朝鮮に伝わり、二度にわたる秀吉の朝鮮出兵、その撤兵の際、諸藩は多くの陶工達を日本に伴い、「磁器」が日本にも伝来されました。
日本は1616年、九州の鍋島藩有田で日本磁器の製法を確立し、17世紀前半の大航海時代に、オランダ東インド会社により、中国や日本から「磁器」がヨーロッパにもたらされました。

 その頃のヨーロッパでは「磁器」を作る技術はまだなく、陶器は陶器ならではの温もりや素朴な風合いの美がありますが、趣の異なる繊細で白く美しい透光性の、しかも強度がある「磁器」は、黄金にもまさる「夢の物質」(White Gold)としてヨーロッパの王侯貴族の人々の心を魅了したそうです。

 ヨーロッパ各国では、東洋で生まれた謎の製法である「磁器」の研究の試行錯誤が繰り返され、中でも熱狂的な古伊万里蒐集家であったザクセン王アウグスト二世は蒐集だけにとどまらず、錬金術師と化学者を組ませ、幽閉し、「磁器」の研究に熱を上げたそうです。
(ドイツのアウグスト王とイギリスのメアリー二世の柿右衛門コレクションは、特に有名です。

 また、アウグスト王は、陶磁器だけではなく、日本の風俗・習慣・植物に至るまで熱愛したとか。ヨーロッパに行かれたら、是非各国のお城に残るポーセリンキャビネットを覗いてみて下さい。きっと東洋の先人達の匠を目にする事が出来るでしょう!)
 そしてアウグスト王の元、ヨーロッパで初の磁器製法に成功したのは、日本より100年近く後の1709年の事、その結果生まれたのがマイセン窯です。
極秘にされていた製法技術もまたたくまにドイツからヨーロッパ全土に広まり、そうしてたくさんの窯が誕生しました。

 当時の中国や日本の白磁に描かれていた絵柄は、中国趣味(シノワズリ)や日本独特の「古伊万里様式」「柿右衛門様式」、東洋のブルーへの憧れを抱かせたと云われる「染付」で、ようやく「磁器」の生産が始まると、それらの模倣(写し)がヨーロッパの各窯で流行したそうです。(独マイセン窯 英チェルシー窯 和蘭デルフト窯 仏セーブル窯 シャンティー窯等)
10年後、マイセン窯は、東洋風の菊や牡丹を描いた「インドの花」で名声を確立しました。中でも「ブルーオニオン」は有名ですが、当時の絵付け師が、ザクロの実を玉葱に見間違えて模写したという、ユニークな逸話が残っていますね。
そうして、マイセンをはじめヨーロッパ各窯は、当初モチーフは中国や日本の追随でしたが、多岐にわたる変遷を経て、ヨーロッパ独自の様式へと発展・展開して現在に至りました。
華やかな色彩のこぼれんばかりのブーケ、伝統的な図柄、華麗な金彩など、西洋ならではの夢や憧れが白磁に上に舞い降りて、咲き誇っているように感じます。
 「磁器」を発明した中国を源に、東洋と西洋が影響し合い、「磁器」に描くモチーフや技法の中に、それぞれの様式の美を追求した長い歴史に触れ、時代毎の作品を目にする時、私はなんとも胸が熱くなり感動を覚えます。
1760年代、ヨーロッパの磁器工場の数は30数カ所になったと伝えられています。
当時、貴族社会で広まり始めていたテーブルに並ぶ新しい飲み物、紅茶、コーヒー及びチョコレート(ココア)の流行も大いに関わっていたそうです。
 私は、当時は王侯貴族の命によるものとはいえ、ヨーロッパの陶工・絵付けに携わった人たちが、東洋から伝わった白く美しい「磁器」に描かれた、中国や日本の花鳥風月の絵を熱い眼差しで眺め、無心に模倣している姿を想像するのは、なんとも嬉しく、日本人としても誇らしい事、有り難い事と感じます。

 日本特有の美意識のさまざまな表現のひとつに、やきもの、磁器に描くという表現があり、日本人のみならず、その美と技を遠い異国ヨーロッパにまで憧憬の念を抱かせた、当時の陶工・絵付け師、その名もなき先人である大先輩の人たちに、心から敬意を表したいと思うのです。また、ヨーロッパ王侯貴族の蒐集家の存在があったおかげで、また大航海時代という大波の中、東西の交流も盛んになり、ヨーロッパからもさまざまなものが日本に伝わりました。

お互いが異国の風や空気を熱く感じとり、影響し合い尊重する事で、そのひとつとして日本の有田の発展にも大きな影響がもたらされたそうです。その恩恵を、今の時代の私たちがいただいていると思うと、やはり感謝の気持ちを忘れないでいたいですね。

*** 陶器と磁器ってどう違うの? ***
 私達がふだん「やきもの」とか「せともの」と呼んでいるものは、正確には、陶器(土器・炻器・陶器)と、磁器に分類されます。
原料となる粘土と砂(珪石・長石)を調合し、その割合で陶器や磁器が作られるそうです。
陶芸に携わる方が易しい言葉で説明下さっていますが、粘土が「肉」とすると、珪石は「筋肉」、長石は「骨」の役割だそうです。そう考えると解りやすいですね。

珪石:石英(クオーツ、水晶)を主体とした珪化物で、土の粘り気を調整し、
    長石と溶 け合ってガラスを作り、焼いた素地の骨格をつくる性質。
長石:アルカリを含み、1000℃以上の高温になると、徐々に周りを溶かして結合し、ガラスを作る性質。

 さて、陶器は土もの、磁器は石ものと呼ばれますが、陶器と磁器の一番の大きな違いは原料となる粘土の違いです。
陶器はカオリンを含まない粘土(土質)で作られるのに対し、磁器は石質即ち長石が主成分を成している磁土(カオリンを含む)で作られます。
普段使っている器が「陶器」か「磁器」か一見してわからなければ、爪で弾いてみて下さい。
含みのある濁った音がするのが「陶器」、シャープでクリアな金属音が響くのが「磁器」です。

やきもの の種類と特徴:
土器(earthen ware)
粘土質の素地を700~800℃で素焼きしたものです。無釉。
素地は吸水性があり不透光性、もろくて壊れやすいです。
例)赤煉瓦 植木鉢等
*人類が初めてつくった「やきもの」で、縄文・弥生式土器に代表されます。
最も古い ものは青森県大平山元で見いだされた土器で16500年前のものと云われています。
世界各地の土器と比べると桁違いに古いものだそうです。

炻器(stone ware)
アルカリや鉄分などの不純物を含む粘土質の有色素地(素地が白でない粘土)を乾燥させ、1200℃前後で長時間本焼きしたものです。
素地は吸収性がなく不透光性、強度があります。
例)備前焼 信楽 常滑 万古 越前 伊賀等の焼締陶

陶器(pottery)
粘土質の素地を800℃くらいで素焼きし、施釉して1000~1300℃で本焼きしたものです。素地に吸水性があり不透光性、磁器に比べると割れやすいです。
例)益子焼 萩焼 マジョリカ焼 デルフト焼等 
磁器(porcelain)
カオリンという、磁器の白さを出す耐火度の高い粘土類や珪石、長石を添加した素地 を800℃くらいで素焼きし、施釉して1300℃以上の高温で本焼きしたものです。
素地に吸水性はなく、白色で透光性があり、強度があります。
例)有田焼 瀬戸焼 京焼 九谷焼 マイセン セーブル等
また成分の配合で、磁器は更に分類されます。  

硬質磁器:真正磁器(主原料がカオリン)一般流通品(主原料が石膏やソーダ)
軟質磁器: 磁器化温度が1200℃前後の低温で硬さが低い(=軟らかい)もの。
透明性に優れる。19世紀以降にフランスで作られたセーヴル磁器、1750   年英国で誕生したボーンチャイナなどがある(カオリンの代用に牛骨灰を入れて開発された乳白色の磁器)。

特殊磁器: 工業材料等に利用されます。
また、半磁器(semi porcelain)という陶土と磁土を合わせ、陶器(土もの)の柔らかさと磁器(石もの)の硬質さを併せたものがあります。素地には若干の吸水性があります。


*施釉=素地の上をガラス質の釉薬で覆う事です。素焼き→施釉→本焼きして仕上げます。
また、一言に絵付けと総称していますが、厳密には施釉する前の素地の状態に絵を描くことを下絵付けといい、施釉した上に絵を描く事を上絵付けといいます。
下絵付けの最も一般的なのは呉須(酸化コバルト、900年頃からペルシャで使用されていた青系の原料となる鉱物でコバルトブルーの元祖)で絵を描く事で、「染付」と呼ばれるものです。透明釉を掛け、1250℃くらいで本焼き(還元焼成)し、藍一色で仕上げます。中国・朝鮮では「青花(せいか)」、英語では「Blue and white」と呼ばれています。日本では着物の藍染を思わせることから「染付」と呼ばれるようになったそうです。
*ポーセリンアートは上絵付けが主流ですが、上絵付けでもイングレース(inglaze)といって、高温焼成し釉薬の下に絵の具を滲み込ませ、下絵付けのように表現できる手法もあります。

参考文献: 原宿陶画舎 西洋陶絵付教則本/アトリエ陶彩館資料/日本セラミックス協会セラミックス博物館
画像作品: Hand Painted by Rieko Kawai