Atelier la Primavera

Porcelain Art +α(アルファ){ 創造の扉 }へようこそ!
作品には、 その人の夢や心象風景が表れるといいます
見る人の心には、 光や香り 美しい音楽が流れたら 素敵ですね
そう願いつつ・・・

Atelier la Primavera

Shabby Chic Collage
 ~ ジョバンニとカンパネルラ 

居合わせた乗客たちはとても穏やかに、それぞれの話に耳を傾け坐っていた
何処までも、何処までも、一緒なんだと思っていたのに


--- 「まづもろともにかがやく宇宙の微塵となりて無方の空にちらばらう。」 ---








そして、さっきまで横にいたカンパネルラの姿がないことに気づいた時
ジョバンニは叫び声を上げた!


ギギギー・・・・ バタン
私の声は扉の音に吸い込まれ、きっと誰にも届かない・・・








誰かの記憶の部屋にいた
気付けば旅 (銀河) から戻っていた

耳元をよぎる話し声 遠のく靴音
コートを剥ぎ取られたハンガーが小さく身震いして静止するまで
そのわずかな時間に、とても大切なたくさんの人の時が流れたような気がした

さっきまでの出来事は、まるでぱらりとページをめくられたように跡形もない
それはずっと昔の事だったかしら?
頭はスッキリしている
まるで深く長い眠りからゆっくり目覚めた時のように・・・








書きかけの手紙 ラベルが剥がれかかったインク瓶
角が擦れた皮表紙の亜麻色の匂い
オルゴールの小箱の最後の音の余韻
机上の写真の少女の瞳はどこか退屈そうで、小さなかすかな溜め息が聞こえてくる
誰かが誰かを想っていた 誰かがずっと大切にしていた
手の温もりと記憶の香り それは全て確かな事実
過去のどこかの確かな時間


ジョバンニは私、ジョバンニはカンパネルラ
写真の中のあの人はジョバンニだったと?
昔咲いた窓辺の花がかすかに揺れて、窓の外からカンパネルラ (鐘) が響く

* * * * * 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」に寄せて  * * * * *









アンティークやブロカントのお店で出会ったものや、古紙や雑誌を切り抜いて
ランダムにコラージュしていると、自然にストーリーが生まれてきます。

当時の生活や人の想いに導かれるように、心はタイムスリップ
そしてヴェールに包まれたような、シャビーシックの不思議な世界が出来上がります。

その時代を生きた人の琥珀色の写真や手紙
スタンプが押してある古い切手や美しいラベル
切り抜かれた本の一節や、シンボリックな形

長い月日の旅の果て、巡りめぐって今私の手の中で出会っている 「不思議」 を思う時
それらには、やはり意思があると感じてしまいます。

いつかの誰かの、大切な人への永遠の願いだったり
ずっと旅をしているエアメールとか
大人になるのを忘れてしまった愛らしい少女の写真など・・・
そんな色褪せても伝わってくる生命感や温もりに、愛おしさや懐かしさを感じ、ふと手が止まります。

それはずっと前の時代に生きていた (かもしれない)、 「私」 からのメッセージ?
「いつかの誰かの大切な時間&大切な想い」 に、そっと耳を澄ましながらコラージュしています。







Shabby Chic Collage Diploma
Rieko Kawai


Shabby Chic Collage  その制作と魅力について



こちらは、元はただの白木の箱でした。
全体にコラージュを施しアクリル絵の具で装飾したら
装飾するようにインクのシミやカビっぽさを加えてゆきます。
金具は錆びさせ、角々に傷みや汚れ具合も油紙や絵の具でプラス。



擦ったり・・・
トントンしたり・・・
磨いたりを繰り返して・・・


〈 Shabby Chic Collage Diploma 研究科課題作品より 〉

使い込まれたセピア色の温もりの魔法 をかけてゆくのです。

*********


例えば、ヨーロッパなどの小さな教会に入ると、
仄かな灯りの中に飾られている古い絵画を目にします。
長い年月の間に付着したカビや埃

ローソクやお香の煤で亜麻色になったり黒びかりしている絵画
無数の小さな傷やシミも。

ずっと昔の昔
少年がつまずいて、絵画の額縁の角におでこをぶつけたかもしれません。
老人が上着を脱ごうとステッキを立て掛けて、付いた凹みかもしれません。

それはもしかしたら
母親に抱かれた赤ん坊が伸ばして触れた、小さな指の温もり。
それはもしかしたら
お祈りをしてそっと絵に近づき額を寄せた時に流れた、貴婦人の涙の痕かしら。

そんな時の流れの中の出来事を
絵画はすべて受け止め記憶しているのですよね、きっとね・・・。

そしてそんな時の流れの出来事を
すべてリセットするように表面のカビや煤を洗浄し
絵具などが剥離した個所を修繕して
生まれたばかりの絵画に出会わせてくれる作業を 「修復」 というのなら
もしかしたら Shabby Chic Collage (シャビーシックコラージュ)とは
その真逆を愛するのかもしれません。

長い長い時の流れの中の出来事の軌跡
そこに美意識と温もりを見出すのですから。

タイムスリップさせる作業工程はちょっとどこかマニアックで魅惑的
次はいつの時代へ出掛けようかな・・・。